贈 り 物
鋼雅 暁様
「セイ、セイ! 帰りました」
「あれ、総司さま?」
ある日の夕暮れ時。
突然、夫・総司が帰宅し、セイは驚いた。
「今夜は巡察だって……」
「そうでしたけど、帰ってきました」
「お休みがもらえたんですか?」
お休みというか永倉さんに巡察を押し付けてきちゃいました、と笑う総司は、懐から何か小物を取り出した。
「セイ、これ、贈り物です」
「え? 私に、ですか?」
びっくりするセイを軽々と抱き寄せ、総司はその髪にそっと簪をさした。
大きすぎず派手すぎず。しかし、セイの美しさを邪魔することなく、しかしそれでもきちんと存在感を放っている簪。
数日前、巡察の途中に偶然見つけた。
公私の区別はいつでもきちっとつけている総司だが、その時ばかりは巡察を一瞬忘れ、買い求めてしまった。
というのも、一瞬にして頭の中に、簪をさしたセイの映像が浮んでしまったのだから、仕方がない。
「思ったとおり、よく似合いますよ。鏡、見てごらんなさい」
「ありがとうございます」
いそいそと鏡を覗き込むセイはやっぱり女性。簪にして良かった、と総司は胸をなでおろした。
しかし、セイの顔はすぐに思案顔になった。
「あの……着物、変えてきます」
総司が不在のときのセイは男装だ。男装に簪は合わないと思ったらしい。
「ふふ、着る物なんて何でもいいんですけどねぇ」
何を着ていても、彼の妻・セイは愛らしい。その事は、総司が誰よりも、恐らくセイ本人よりも良く知っている。
「うふふ」
急遽セイが整えた、夕餉の膳に向かいながら総司が笑みを零した。
「どうなさったんですか?」
「いやね、今頃土方さん、青筋浮かべて怒ってるだろうなって思いまして」
「え、副長に内緒なんですか?」
「勿論ですよ。土方さんが帰してくれるはずないですもん」
ズレているのか大胆なのか……。あの鬼副長を平気で怒らせるのはこの人くらいだろう。
こうして総司が帰ってきてくれるのは嬉しいが、明日こっぴどく叱られるに違いない……などと、
セイは少々複雑な心持で夫の顔を眺めた。
だが、総司はおかずをせっせと口に放り込むことにのみ忙しいようで、セイの視線には気が付かない。
その、あまりに幸せそうな顔を見ていると、
(今頃、永倉先生が、総司さまのぶんまで副長の怒りを買ってるんでしょうね。お気の毒に……)
と、セイはちょっぴり、永倉新八に同情した。
夕餉を綺麗に平らげたあと、総司はセイを縁側へ引っ張り出した。
どこかの家の風鈴の音が、風に乗ってここまで来る。
「総司さま。どうして突然、簪を?」
総司の胸に上半身を預けて、月の浮ぶ川を眺めながらセイが呟いた。
「それはですね、一ヶ月たちましたし、これからもよろしく、って私の気持ちですよ」
あ、とセイは小さく声を上げた。
指を折ってみれば総司と夫婦になり、この家に住むようになって一月が経ったのだ。
あまりの忙しさに、うっかりしていた。
セイが、くるりと総司の腕の中で体の向きを変えた。
そうして、ちょっと恥ずかしそうにしながらも、総司の耳元で囁いた。
「これからもずっとずっと、よろしくお願いします」
「セイ……勿論ですよ」
「でも、私、何も贈り物とか用意してないんですけど……」
総司はセイを抱く腕に力を籠めた。
「いいんですよ、そんなこと」
(セイが笑ってくれるのが一番です、なんてことは恥ずかしくて言えませんね)
くすくす、と嬉しそうに笑う総司とそんな総司を見つめるセイの上を、風鈴の音がやさしく撫でていった。
夏は、もうそこまで来ているようだ。

『河辺の家』の鋼雅 暁様から、拙宅の「開設一ヶ月」のお祝いの品を頂戴いたしました。
とっても甘い夫婦ものです。
夫婦の一ヶ月と拙宅の一ヶ月…。そのお心遣いが憎いですねぇ、うふふvv
鋼雅様の総司サンはセイちゃんにベタ惚れなところがとってもかわいいですv
副長や周囲の方々にとってはどうなんでしょうね。
いい迷惑、といったところでしょうか…(^^ゞ
鋼雅様、この度は素敵な御品をどうもありがとうございます(*^▽^*)
拙いサイト、そしてその未熟な管理人ですが、
これからもどうぞよろしくお願いいたします。m(__)m
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