偽りの言の葉 真摯な瞳
まるる様
本日も、屯所の中は騒がしかった。
その中心は、試衛館時代のからの付き合いがある奴らで。
その中で。
一際小さい、少年が真っ赤になって怒っている。
どうやら、総司にはもちろん。原田・永倉・藤堂にまでからかわれているようだ。
一人。井上さんだけが、神谷を庇っている。
その様子を見ながら、鬼の副長は溜息をついた。
その溜息を、聞き逃さなかったのは総司だ。
「土方さん!」
嬉しそうに呼ぶその声に反し、原田・永倉・藤堂の表情には『ヤバイ』の文字が。
鬼の副長に見つかった。きっとすごい怒鳴られるのだろう。
そう予想した三人だったが、違った。
「また、神谷さんが手紙を貰ったんですよ〜v」
総司の言葉に、土方副長は眉間に皺を寄せて、もう一度、溜息をついた。
「それがどうした?」
真ん中で、真っ赤になっている少年は、土方からみても整っている顔で。
乱暴者が多い新撰組の中で、神谷のその優しげな雰囲気に惹かれる女子は、多い。
それぐらい、土方も知っている。
ところが。
「それがさ〜土方さん!笑えるんだぜ?」と、原田。
「おお!神谷もほんと可哀想だぜ〜」と、全然思っていなさそうな永倉。
「うんうん。神谷はほんと、可愛いというか、えっと、可哀想というか」と、素直に言ってしまう藤堂。
「ねぇ?今度は町人のそれも青年から貰うなんて!最高ですよね?」と、ゲラゲラ笑う総司。
どうやら、今日の土方副長は機嫌がいいとみて、そのまま話しを続ける四人。
町人の青年??
土方にはその言葉が、脳裏に残った。
「もう!いい加減にしてください!先生方!!!」
真っ赤になって怒っている、神谷のその声に。土方は自分が固まっていたことを知る。
「そうだぞ。あまりからかうな、お前達!」
と、井上さんが止めているが、若い四人は聞かずに、神谷をからかっている。
むずむずと。嫌なものが土方の体中を這い巡る。
「うるせぇぇ!!」
土方が怒鳴り、からかいの言葉がピタリと止まった。
「男が男から手紙なんて貰うなんて、気持ち悪いに決まってんだろうが?」
そう言い捨てて、土方は踵を返す。
庭の奥へと入り、気に入っている木の下で振り返った。
後ろから、誰かが付いてきていることには、もちろん気付いていた。
「なんだ?神谷」
「え?気付いておられたんですか?」
少し、息が上がっている神谷を見下ろす、土方。
その視線に、何故か居心地の悪さを感じながら、神谷は土方に頭を下げた。
「ありがとうございました!」
「ああ?何が?」
「え、あの、さっきは、土方副長が怒鳴っていただいたお陰で助かったので」
そう言って、笑う神谷に、イライラとしたものが走る。
「そうか?あいつらと楽しそうに話していたじゃねぇか?」
「はぁ?そんなことないです!」
「本当は無意識に、男を誘っているんじゃないのか?」
言った後で、しまった!と思った。
が、出ていってしまった言葉は取り消せない。
泣きそうになりながらも、上目遣いで睨んでいる神谷の姿に。
土方は、見ていられないと目線を逸らす。
「……今のは、酷いです。副長」
「……ああ」
「ああじゃないです!謝ってください!!」
涙声になりながらも叫ぶその声に、土方は神谷を見た。
赤い顔をして、潤んだ瞳で見上げてくる。
その雰囲気に土方は、眉間に皺を寄せて。
「……やっぱり、お前に隙があると思うが」
と、言った。
可哀想だが。こいつは、可愛らしすぎる。
もうすぐ十八になるというのに。
この声。この顔。この雰囲気。
思案している土方の前で。神谷がとうとう涙を流した。
その涙に、土方の体中が熱くなる。
「…もう結構です!」
そう言って去ろうとする神谷の腕を、慌てて掴む。
「や!離してください!」
暴れる神谷に苛々が募り、土方は小柄なその体を抱きかかえた。
「ふ、副長??」
驚き、その胸から逃れようとする神谷を、もっと抱しめる。
神谷は。セイは。
当たり前だが、こんな風に土方に抱しめられるのは初めてで。
その胸の広さ。その香りに、頭がクラクラしている。
上司である、総司に抱しめられているよりも、もっと。
鼓動が早くなるのは、何故なのか?
土方は神谷を抱しめながら、その小柄さに驚き。甘い匂いに驚き。
離したくない。と、本能的に思っていた。
その心そのままに。神谷を抱しめる。
いつのまにか大人しくなった神谷を、全身で感じる。
「……ほらみろ。隙だらけだろうが」
その声に、神谷は怒りがまた込み上げて、顔をあげる。
涙は驚いた為か、すでに止まっていた。
真上にある、土方の顔。 その瞳。
セイは、息を飲む。 土方の瞳に写っている自分は。
いつも、こんな顔をしているのだろうか?
「……これからは気をつけろよ?」
そう言いながら、土方は、そうっと神谷の体を離した。
秋の風が、二人の間を通り抜ける。
心臓が、ドキドキとして痛い。
セイは痛む胸を抑えるように両手を胸の前で組んでいて。
「何している? これ以上、何かされたいのか?」
土方の言葉に、慌てて頭を振りながら。
「……土方副長は、衆道は嫌いなはずでは?」
「当たり前だろが!大嫌いだ!!」
「じゃぁあ、どうして……」
神谷の問いに、土方は答えない。
「いいから、とっと戻れ」
溜息混じりに言われ、セイは傷ついた。 何故かは分からない。
だけど。
もしかして、『これ以上』なことを望んでいたのは、私なのかもしれない。
そこまで考えて。セイは慌てて自分の思考を振り払う。
「……はい」
そう言い残して、その場を離れた。痛む胸を抱えながら。
去っていくその姿を、土方は見つめる。 土方の胸も、神谷と同じぐらい痛い。
いつからなのだろうか?
あいつの顔を見ては、思っていた以上に酷い言葉を言ってしまい。
しかし、それでもその姿。その声を探してしまう。
「……ちくしょう」
土方の独り言は、宙に溶けた。
秋の空は、どこまでも遠くて。
認めたくないこの心まで、遠く。 どこかへいけばいい。
そう思った。

『marble-cafe』様のキリ番【58000】を踏んでリクさせていただきました。
しかも、【総セイ】サイト様なのに、【歳セイ】をお願いしてしまう図々しさ(笑)
まるる様が【歳セイ】のリクでもいいですよvv なんて仰ってくださったものだから、
つい甘えてしまいました。
まるる様、ありがとうございます(>∇<)
リク内容は確か、歳 > セイ だったような気がします。
素敵に書いてくださってありがとうございます(*^-^*)
悋気という自覚がないままに、歳が思わず行動に出てしまうところが良いですよ〜vv
ああ、そんな歳が格好よくもあり、かわいくもあり、私の頭の中は妄想で一杯です(笑)
そして、そんな歳の行動に動揺してしまうセイちゃん。
まだお互いの気持ちはおろか、自分の気持ちさえ気付いているのかどうか…
私はそういう曖昧な状態の二人が実は好きなのです。
まるる様、とっても素敵な妄想を駆り立てるお話を書いてくださって、
どうもありがとうございましたm(__)m
そして、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
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