「うわ〜っ、土方さん。今時こんなもの掛けているんですか?」
「悪いか。」
「いえ、悪くはないですが、あんまり見たことないですよ。
日めくりを掛けている家なんて。」

今日は会社の後輩、沖田が遊びに来ていた。
以前から遊びに来たいと言っていた沖田 ―― 。
土方の何処がそんなに気に入ったのかわからないが、
あんまりしつこく言うものだから、つい
「いいぜ、来ても。」
と言ってしまったのだ。


「俺は好きなんだよ、日めくり暦!」
無遠慮な沖田の言葉に、少しばかり気を悪くする土方。

「暦って…。土方さんはわりと古風な人だったんですね。」
沖田がその暦を捲りながら笑った。

「それにしても、まだ作っている所もあるんですね。
えっと‥神谷‥金物店‥。金物店ですかぁ。これもまた今時珍しいですねぇ。」

「そうか?昔からの店だったら珍しくもないだろうに。」

「でもどうして金物店なんかにお付き合いがあるんですか?
土方さん、このマンションに一人暮らしですよね?」
沖田が首を傾げる。

「‥べ‥別にいいだろ、そんなこと。」
土方はごほんと一つ咳をして、少し赤らんだ頬を隠すように横を向いた。
「越してきた時にいろいろ買ったんだよ。」

ああ見えて沖田は時々鋭いことを言う。
核心に触れることを訊いてきたりするのだ。
それも無邪気な笑顔で ―― 。


「コーヒーでも飲むか?」
「はいっ。頂きます。―― でも‥‥あっ、何でもないです。」
「でも何だよ?」
「‥ケーキとかは無いですよね‥?」
「‥‥‥。」

沖田にしては遠慮気味に訊いたのだろう。
土方の返答は予想通りとはいえ、あからさまにがっかりした様子。

幾分可哀想に思えて土方は食器棚の奥からクッキーの箱を取り出した。
「ケーキじゃないけどな。」


しかし、この好意が直に土方の首を絞めることとなる。


折角沖田の関心を暦から離したと思ったのに‥‥。

とても男が買うとは思えない可愛らしいクッキーの箱が、
そう、よりによって今土方の心の中に住み着き始めている少女の存在を匂わせるそれが、
また沖田の関心を引いてしまうことになろうとは。


土方の顔に苦笑が浮かぶのは、時間の問題と言えそうだ‥‥。
















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